2022年08月19日

2022年 第 32 週(2022/8/8~2022/8/14)

【今週の注目疾患】
■レジオネラ症
 2022 年第 32 週に県内医療機関から 1 例のレジオネラ症が報告された。
70 代の男性で推定される感染原因は水系感染であった。
現時点において散発的な事例と思われ、同一の場所からの症例集積は認められていない。
 また、本年 1 例目となる死亡事例が報告された(症例届出週 2022 年第 22 週)。
患者は 90 代の男性で、管轄の保健所が積極的疫学調査を実施したが、感染源・感染経路等、原因の特定には至らなかった 1)。
 本年の累計報告数は 39 例となり、病型別では肺炎型が 36 例(92%)、無症状病原体保有者が 2例(5%)、 ポンティアック熱型が 1 例(3%)であった。
性別では男性が 33 例(85%)、女性が 6例(15%)と男性が 8 割以上を占めていた。
年代別では、70 代が 12 例(31%)と最も多く、次いで 80 代が 10 例(26%)、60 代が 7 例(18%)であり、60 歳以上が 8 割以上を占めていた。
レジオネラ症は一年を通して発生が見られるが、夏から秋にかけて届出が多くなる傾向が認められていることから、今後も当該感染症の発生動向を注視していく必要がある。
 レジオネラ症は、レジオネラ属菌による細菌感染症であり、主な病型として重症の肺炎を引き起こすレジオネラ肺炎と、一過性で自然に改善するポンティアック熱がある。
レジオネラ属菌は、土壌や水環境に広く存在する菌である。
感染経路としては、エアロゾル(細かい霧やしぶき)を発生させる人工環境(噴水等の水景施設、空調設備の冷却塔、気泡発生入浴設備、加湿器等)や循環水を利用した風呂を感染源とするエアロゾル感染、浴槽内や河川で溺れた際に汚染された水を吸引・誤嚥したことによる感染、汚染された土壌の粉塵を吸い込んだことによる塵埃感染などがある。
人から人へ感染することはないとされる 2,3)。

 レジオネラ肺炎の潜伏期間は 2~10 日である。
全身倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛などの症状に始まり、咳や 38℃以上の高熱、寒気、胸痛、呼吸困難がみられるようになる。
意識レベルの低下、幻覚、手足が震えるなどの中枢神経系の症状や下痢がみられるのも特徴である。
適切な治療がなされなかった場合には、急速に症状が進行し、死亡に至ることもある 3)。
 ポンティアック熱の潜伏期間は 1~2 日である。 突然の発熱、悪寒、筋肉痛で始まるが、一過性で治癒する 2)。
 高齢者や新生児は肺炎を起こす危険性が通常より高いので注意が必要である。
また、大酒家、喫煙者、透析患者や免疫機能が低下している人は、レジオネラ肺炎のリスクが高いとされているので、注意が必要である3)。

 レジオネラ症対策としては、超音波振動などの加湿器を使用する時には、毎日水を入れ替えて容器を洗浄することが重要である。
なお、レジオネラ属菌は 60℃では 5 分間で殺菌されるため、水を加熱して蒸気を発生させるタイプの加湿器は感染源となる可能性が低いとされている 3)。
 追い炊き機能付きの風呂や 24 時間風呂などの循環式浴槽を備え付けている場合には、浴槽内に汚れやぬめり(バイオフィルム)が生じないよう定期的に清掃を行うなど、取扱説明書に従って維持管理をする 3)。
エアロゾルを吸い込まないようにすることも重要である。
エアロゾルが発生する高圧洗浄作業や、粉塵が発生する作業、腐葉土を取り扱う園芸作業をする場合には防塵マスクを着用して感染を予防する 2)。
 また、がれき除去等の作業時に粉塵やエアロゾルを吸い込み、罹患するおそれがあるため、国立感染症研究所は昨年の水害時に際して、注意すべき感染症として、レジオネラ症の発生リスクを中程度と評価し、注意喚起を行っている。
千葉県内においても、台風 8 号の影響で地域によっては土砂災害や浸水の被害が発生している。
台風や大雨による水害発生時、がれきや汚泥の除去作業にあたる場合には、マスク等を着用し、肌の露出や素手の作業を回避して予防する必要がある 4,5)。

■手足口病
 警報発令継続中(警報開始基準値 5.0 終息基準値 2.0)
 2022 年第 32 週手足口病定点当たり報告数 県全体 4.65 (人) 前週 7.22(人)から減少
 第 27 週に警報開始基準値である定点当たり報告数5.0(人)を上回って以降、県内では警報発令状況が続いている。
第 32 週は全体的に減少傾向にある一方で、市川、安房保健所管内では増加に転じ(市川 3.44→5.57、安房 2.75→5.50)、5.0(人)を上回ったことから、引き続き手洗い励行等の感染予防策実施が重要である。
なお、第 32 週は夏季休業の医療機関も多く、報告医療機関数が通常時より少ないことからその値の解釈には注意を要する。

■参考
1)千葉県:【レジオネラ症】感染症予防のための情報提供について(令和 4 年 8 月 15 日発表)
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所:レジオネラ症とは
>>詳細はこちら
3)厚生労働省:レジオネラ症
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4)国立感染症研究所:災害と感染症ポータル 令和3年夏季の水害(2021 年 7 月~)
>>詳細はこちら
5)千葉県:浸水した家屋等の消毒方法について
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年8月17日更新)