2022年06月03日

2022年 第 21 週(2022/5/23~2022/5/29)

【今週の注目疾患】
■レジオネラ症
 2022 年第 21 週に県内医療機関からレジオネラ症の報告が 5 例あり、本年の累計は 24 例となった。
5 例全て男性であり、肺炎型であった。年代別では 40 代が 2 例、60 代、70 代、80 代が各1 例であった。
推定される感染経路は水系感染が 4 例、不明が 1 例であった。
現時点において散発的な事例と思われ、同一施設などから症例の集積は認められていない。

 2013 年から 2022 年第 21 週までに 745 例の報告があった。
性別では男性 621 例(83%)、女性が 124 例(17%)であり、男性が 8 割以上を占める。
年代別では、男性では 60 代が 188 例(30%)と最も多く、次いで 70 代が 158 例(25%)であった。
女性では 80 代が 35 例(28%)と最も多く、次いで 70 代が 32 例(26%)であった。
60 歳以上の割合は、男性は 71%、女性は 96%であった。
病型別では肺炎型が 708 例(95%)で全体の 9 割以上を占め、ポンティアック熱型が 31例(4%)、無症状病原体保有者が 6 例(1%)であった。
推定される感染経路※はその他・不明が495 例(66%)で最も多く、次いで水系感染 220 例(30%)、塵埃感染 40 例(5%)であった。
推定される感染原因としては、水系感染は、入浴施設、自宅浴槽、空調設備、加湿器、洗車などがあげられていた。
塵埃感染は、工事現場、廃棄物処理場、園芸、台風・豪雨災害のがれき処理などがあげられていた。(※複数記載のあったものは、重複して計上している)

 国立感染症研究所によると、レジオネラ症は検査技術の開発・普及に伴い、報告件数は近年増加傾向にある1)。
新型コロナウイルス感染症流行以降、報告数が著しく減少した感染症もあるが、当該感染症については、顕著な減少はみられていない。
一年を通して発生がみられるが、6 月頃から増加をはじめ、11 月頃まで報告数が多い傾向にあることから、今後も当該感染症の発生動向を注視していく必要がある。

 レジオネラ症は、レジオネラ属菌による細菌感染症であり、主な病型として重症の肺炎を引き起こすレジオネラ肺炎と、一過性で自然に改善するポンティアック熱がある。
レジオネラ属菌は、土壌や水環境に広く存在する菌である。
感染経路としては、エアロゾル(細かい霧やしぶき)を発生させる人工環境(噴水等の水景施設、空調設備の冷却塔、気泡発生入浴設備、加湿器等)や循環水を利用した風呂を感染源とするエアロゾル感染、浴槽内や河川で溺れた際に汚染された水を吸引・誤嚥したことによる感染、汚染された土壌の粉塵を吸い込んだことによる塵埃感染などがある。
人から人へ感染することはないとされる1)、2)。

 レジオネラ肺炎の潜伏期間は 2~10 日である。
全身倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛などの症状に始まり、咳や 38℃以上の高熱、寒気、胸痛、呼吸困難がみられるようになる。
意識レベルの低下、幻覚、手足が震えるなどの中枢神経系の症状や下痢がみられるのも特徴である。
適切な治療がなされなかった場合には、急速に症状が進行し、死亡に至ることもある2)。
 ポンティアック熱の潜伏期間は 1~2 日である。
突然の発熱、悪寒、筋肉痛で始まるが、一過性で治癒する1)。
 高齢者や新生児は肺炎を起こす危険性が通常より高いので注意が必要である。
また、大酒家、喫煙者、透析患者や免疫機能が低下している人は、レジオネラ肺炎のリスクが高いとされているので、注意が必要である2)。

 レジオネラ症対策としては、超音波振動などの加湿器を使用する時には、毎日水を入れ替えて容器を洗浄することが重要である。
なお、レジオネラ属菌は 60℃では 5 分間で殺菌されるため、水を加熱して蒸気を発生させるタイプの加湿器は感染源となる可能性が低いとされている2)。
 追い炊き機能付きの風呂や 24 時間風呂などの循環式浴槽を備え付けている場合には、浴槽内に汚れやぬめり(バイオフィルム)が生じないよう定期的に清掃を行うなど、取扱説明書に従って維持管理をする2)。
 また、エアロゾルを吸い込まないようにすることも重要である。
エアロゾルが発生する高圧洗浄作業や、粉塵が発生する作業、腐葉土を取り扱う園芸作業をする場合には防塵マスクを着用して感染を予防する1)。

■参考
1)国立感染症研究所:レジオネラ症とは
>>詳細はこちら
2)厚生労働省:レジオネラ症
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年6月1日更新)