2021年12月03日
今週の注目疾患
2021年 47週(2021/11/22~2021/11/28)
【今週の注目疾患】
≪つつが虫病≫
2021 年 47 週に県内医療機関からつつが虫病が 7 例報告され、前週の 3 例からさらに増加し、2021 年の累計は 34 例となった。
7 例の届出の内訳は、性別では女性が 5 例(71%)、男性が 2例(29%)で女性が多く、年齢は中央値が 71 歳[範囲 67 歳-89 歳]であり、全員 60 代以上の高齢者であった。
保健所管内別では、安房保健所管内が 5 例(71%)、印旛・君津保健所管内からそれぞれ1例ずつ報告があった。
7 例中 6 例ではいずれも痂皮(かさぶた)が認められており、ダニ等からの刺咬が疑われる。
県内のつつが虫病の発生動向には季節性が認められており、以下のように例年秋口(10~11 月)頃から翌春の 2 月頃にかけて報告が多く見られる。
また、これまで患者の報告のあった地域は県内広範囲に渡るが、偏りが見られており、過去 5 年間において、安房保健所管内からの報告が 239 例中 150 例(62.8%)と最も多く、次いで夷隅保健所管内(48 例/239 例,20.1%)、市原保健所管内(12 例/239 例,5.0%)からの報告が多い傾向があった。
つつが虫病の流行シーズンは今後もしばらく続くため、引き続き感染には十分注意が必要である。
つつが虫病はダニの一種であるツツガムシによって媒介される疾患であり、病原体はリケッチアの一種である Orientia tsutsugamushi である。
野山等へ入り、これらを有するツツガムシに刺咬されることによって感染する場合が多い。
本疾患の予防にはダニからの刺咬を防止することが最も重要であり、農作業や森林作業時、レジャーなどで野山等へ入る際には皮膚の露出をなるべく少なくしたり、ダニ忌避剤を使用し、皮膚へのダニの付着を防ぎ、刺咬されないように心掛けることが必要である。
≪インフルエンザ≫
2021 年 47 週に定点医療機関から報告されたインフルエンザの定点当たりの報告数は 0.02 人であり、前週とほぼ同数であった。
依然として県全体では流行開始の目安としている指標(定点当たりの報告数 1.0 人)を大きく下回っているが、42 週以降患者が継続して報告されており、今後の発生動向は注意深く見守っていく必要がある。
今シーズンの県内定点医療機関の協力によるインフルエンザウイルス迅速診断結果の報告では19 例中 B 型が 11 例(57.9%)、A 型が 8 例(42.1%)であり、B 型が多い傾向が認められている。
現在、世界的に見てもインフルエンザの活動性は低いままであるが、WHO の直近のレポート(Global Influenza Programme)によると、昨年と比較してインフルエンザの検出数がわずかに増加しており、ーロッパや南アジア、南アフリカ等一部の国・地域では COVID-19 発生以前のパターンに戻る兆候が見られてきているとの報告がある。
型別では A 型に比べて B 型がやや優勢(A 型 45.4%, B 型 54.6)%であり、A 型のうち H3N2 は86.1%、(H1N1)pdm09 は 13.9%、B型はすべて Victoria 系統に属していた 1)。
また、米国 CDC においても直近数週間においてインフルエンザ A(H3N2)ウイルスの増加が検知され医療従事者や専門家向けでアラートを発出している 2)。
昨シーズンは国内においてインフルエンザの流行がほとんど見られず、インフルエンザに対するコミュニティの保護レベルが低くなっている可能性があり、また今シーズンの流行時期や規模は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況も影響するため不透明である。
インフルエンザの基本的な予防策として、インフルエンザワクチンを接種することや流行期には人混みを
避けること、マスク着用、外出後のうがい、手洗いの励行等を着実に実施することが重要である3)。
■参考
1)Global Influenza Programme Influenza Update N○407(WHO)
>>詳細はこちら
2)Increasing Seasonal Influenza A(H3N2)Activity, Especially Among YoungAdults, in the
Setting of SARS-CoV-2 Co-circulation(CDC)
>>詳細はこちら
3)インフルエンザとは(国立感染症研究所)
>>詳細はこちら
【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和3(2021)年12月1日更新)