2021年12月17日

今週の注目疾患  
2021年 49週(2021/12/6~2021/12/12)
【今週の注目疾患】

≪感染性胃腸炎≫
 2021 年第 49 週に県内定点医療機関から報告された感染性胃腸炎の定点当たりの報告数は、前週の 4.17(人)から 5.93(人)となり、7 週連続で報告数が増加となった。
今週報告された計 765 例のうち、年齢群別では 2 歳が 125 例(16.3%)で最も多く、次いで 3 歳が 119 例(15.6%)、4 歳が 97 例(12.7%)、1 歳が 96 例(12.5%)であり、5 歳未満の患者が全体の約 6 割を占めていた。
保健所管内別では、県内 16 保健所のうち夷隅・安房保健所管内を除く 14 の保健所管内において発生報告があり、いずれも定点当たり報告数が 2.0(人)を上回っていた。
特に船橋市 10.8(人)、海匝 10.7(人)、印旛 9.0(人)が報告の多い上位 3 保健所管内となっている。
 県では冬季にノロウイルスの流行に伴い、秋口から報告数が徐々に増加し、冬季にピークを迎えることが多い。
過去 10 年間の発生動向では、報告数が低調だった昨シーズン(2020/21 シーズン)を除き、早いシーズンでは第 44 週に定点当たり報告数5.0 人を超え、ピークは例年第 50 週前後であった。
大きな流行が発生または継続しつつあると疑われることを示す指標となる警報レベルの基準値(定点当たりの報告数 20.0 人)を超えたのはこの 10 年で 2012/13 シーズン、2013/14 シーズン、2016/17 シーズンの 3 シーズンであった。
 本年は昨シーズン(2020/21 シーズン)と異なり、例年同様の秋~冬の増加傾向が認められており、また、地域によっては保育園等での集団発生疑い事例の報告もあがってきているため、今後の発生状況には十分注意する必要がある。

 感染性胃腸炎は多種多様のウイルス(ノロウイルス、ロタウイルス、エンテロウイルス、アストロウイルス、アデノウイルス、サポウイルス等)、細菌(病原性大腸菌、サルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクター等)、原虫・寄生虫(クリプトスポリジウム、アメーバ、ランブル鞭毛虫等)が本疾患の原因病原体となり得る。

 特にノロウイルスは感染性胃腸炎の主要な原因病原体の一つであり、食品・水媒介のウイルス性食中毒と併せて感染患者からの糞口感染や接触感染にも注意を要する。
 現在ノロウイルスによる感染性胃腸炎に使用可能なワクチンはなく、感染を予防するためには、食品類の十分な加熱、石鹸と流水による手洗いの励行、体調不良者との濃厚接触の回避、嘔吐物・糞便等の迅速な処理(飛散しないようペーパータオル等で静かに拭き取ったり、市販の凝固剤等を使用)および次亜塩素酸ナトリウムまたは亜塩素酸水等による汚染区域の消毒が重要になる。
 現在、新型コロナウイルス感染症の感染予防策として、消毒用エタノールによる手指消毒が推奨されているが、ノロウイルスやロタウイルスは消毒用エタノールのみでは効果が期待できないことから、石鹸と流水を用いた手洗いの代用にはならないことに注意する必要がある。
 ウイルスは症状がおさまってから便中に 3 週間以上排出されることがあるため、保育施設等の従事者は排便後やおむつ交換後の手洗いを徹底することも重要である。
また、嘔吐物・糞便等を処理する際には嘔吐物や糞便中に含まれる多量のウイルスへの曝露を防止するため、使い捨てのガウン(エプロン)、マスク、手袋を着用し適切な防護を行ったうえで実施することも感染予防の観点から重要である。

≪引用・参考≫
・ノロウイルスに関する Q&A(厚生労働省)
>>詳細はこちら
・保育所における感染対策ガイドライン(2018年版)
>>詳細はこちら
・About Norovirus(CDC)
>>詳細はこちら


【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和3(2021)年12月15日更新)