2022年01月28日

今週の注目疾患  
2022年 第 3 週(2022/1/17~2022/1/23)
【今週の注目疾患】

≪ 感染性胃腸炎 ≫
 2022 年第 3 週に県内定点医療機関から報告された感染性胃腸炎の定点当たりの報告数は、前週(2022 年第 2 週)の 5.60(人)から増加し、8.48(人)となった。
第 3 週の定点当たりの報告数としては過去 5 年間で最も多くなっている。
 今週報告された計 1068 例のうち、年齢別では 1 歳が 196 例(18.4%)で最も多く、次いで 2歳 170 例(15.9%)、3 歳 103 例(9.6%)と続く。
 保健所管内別では、船橋市 12.20(人)が最も多く、海匝 11.67(人)、千葉市 10.50(人)と続き、県内 16 の保健所のうち 6 つの保健所管内で定点当たり報告数 10.00(人)を上回っていた。

 2021 年 12 月には習志野市内の保育園で発生したノロウイルスによる感染性胃腸炎の集団発生を含む 3 件の感染性胃腸炎集団発生があった1)。
 県では、秋口から報告数が徐々に増加し、第 50 週前後(12 月下旬頃)にピークを迎えることが多い。
前シーズン(2020/21 シーズン)は同時期に流行がほとんど見られなかったが、今シーズンは増加傾向が見られている。
2021/22 シーズンは大きな流行が発生または継続しつつあると疑われることを示す指標となる警報レベルの基準値(定点当たりの報告数 20.0 人)には達していないが、今後の発生状況には十分注意する必要がある。

 感染性胃腸炎は、ウイルスまたは細菌による感染性胃腸炎を包含する症候群であり、多くのウイルス、細菌、寄生虫が原因病原体となり得る。
ウイルス性のものではノロウイルス、ロタウイルス、腸管アデノウイルスなどがある。
細菌性のものでは腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクターなどがある。
寄生虫ではクリプトスポリジウム、アメーバなどがあげられる。
本疾患は多種多様な病原体の関与が想定されるため、一定の疫学パターンをとらないことが予想されるが、例年初冬から増加しはじめ、12 月頃に一度ピークを形成する。
これはウイルス性、特にノロウイルスの流行によるものと考えられる2)。

 ノロウイルスの潜伏期間は 1~2 日であると考えられている。
嘔吐、下痢が主症状であるが、腹痛、頭痛、発熱、倦怠感などを伴うこともある。
特別な治療を必要とせずに軽快するが、乳幼児や高齢者等は嘔吐、下痢などによる脱水や窒息に注意を要する。
ウイルスは症状が消失したあとも 3~7 日間は患者の糞便中に排出されるため、二次感染に注意が必要である3)。

 ノロウイルスのヒトへの感染経路は主に経口感染である。
ノロウイルスに汚染された食品を介した経路と患者の便や嘔吐物などから手指等を介してヒト-ヒト感染する経路が代表的なものとしてあげられる。
また、ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがある4)。

 現在、ノロウイルスによる感染性胃腸炎に使用可能なワクチンはなく、感染を予防するためには、食品類の十分な加熱、石けんと流水による手洗いの励行、嘔吐物・糞便等の迅速かつ適切な処理(飛散しないようペーパータオル等で静かにふき取る、市販の凝固剤等を使用する等)および次亜塩素酸ナトリウム等による汚染区域の消毒が重要となる。
 手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法は石けんと流水による手洗いである。
調理や食事の提供を行う前、食事の前、トイレの後は必ず手洗いを行う。
また、手袋をしている場合であっても、嘔吐物・糞便等の処理やオムツ交換を行った後は必ず手洗いを行うことが重要である4)。
 現在、新型コロナウイルス感染症の感染予防策として、消毒用エタノールによる手指消毒が推奨されているが、ノロウイルスに対しては消毒用エタノールのみでは効果が期待できないことから、石けんと流水を用いた手洗いの代用にはならないことに注意する必要がある。

■参考
1)千葉県:感染性胃腸炎の集団発生について
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所:感染性胃腸炎とは
>>詳細はこちら
3)国立感染症研究所:ノロウイルス感染症とは
>>詳細はこちら
4)厚生労働省:ノロウイルスに関するQ&A
>>詳細はこちら


【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年1月27日更新)