2023年07月21日

2023年 第28週
(令和5年7月10日~令和5年7月16日)

【今週の注目疾患】
■デング熱
 2023 年第 28 週に県内医療機関からデング熱の届出が 2 例あった。
本年初のデング熱の届出である。
2 例とも推定感染地域は海外であった。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下に県内のデング熱の届出数は減少したが、2022 年は 7 月から 9 月に計 7 例の届出があった。

 2019 年から 2023 年第 28 週までに県内では 49 例のデング熱の届出があった。
性別は男性 33例(67%)、女性 16 例(33%)であった。
年代別では 20 代及び 30 代が各 12 例(各 24%)と最も多く、次いで 10 代及び 50 代が各 9 例(各 19%)であり、30 代以下が約 7 割であった。
推定される感染地域は全て国外であり、8 割以上が東南アジア地域、南アジア地域で、その他、オセアニア、中南米・カリブ、中東・アフリカ地域であった。
49 例中 16 例で血清型の記載があり、内訳は 2 型 9 例(9/16, 56%)、1 型 5 例(5/16, 31%)、3 型 2 例(2/16, 13%)であった。
 日本の輸入デング熱症例の動向は、最近増加傾向にある。
特に 2022 年 7 月から 11 月には毎月10 例以上の報告があり、2022 年 10 月には 24 例の届出があった。
2022 年 7 月から 2023 年 6 月までの 1 年間の輸入デング熱症例 118 例における推定感染地域として多かったのは、ベトナム(29 例)、ネパール(20 例)、フィリピン(14 例)、インドネシア(12 例)であった 1)。
2023 年は東南アジア地域やアメリカ地域など世界各地でデング熱の大規模な流行が報告されている 2, 3)。
 デング熱はデングウイルスの感染によって生じる感染症である。
デングウイルスはフラビウイルス科フラビウイルス属に分類されるウイルスであり、1~4 型の 4 つの血清型からなる。
主な媒介蚊はネッタイシマカ及びヒトスジシマカであり、ヒト→カ→ヒトの感染環により自然界に存在している。
現在、ネッタイシマカは日本国内には分布していないが、ヒトスジシマカは北海道を除く広範な地域に分布している 4)。
ヒトスジシマカは主に 5 月中旬~10 月下旬に活動が見られるため、蚊の活動が活発になる夏季~秋季は特に注意が必要である。
 デングウイルスに感染した場合、約 50~80%の割合で不顕性感染に終わると考えられている。
感染して 3~7 日後に突然の発熱で始まり、頭痛特に眼窩痛・筋肉痛・関節痛を伴うことが多く、食欲不振、腹痛、便秘を伴うこともある。
発症後、3~4 日後より胸部・体幹から始まる発疹が出現し、四肢・顔面へひろがる。
これらの症状は 1 週間程度で消失し、通常後遺症なく回復する 5)。
 デングウイルス感染後、デング熱とほぼ同様に発症し経過した患者の一部において突然、血漿漏出と出血傾向を主症状とするデング出血熱となる。
重篤な症状は、発熱が終わり平熱に戻りかけたときに起こることが特徴的である。
患者は不安・興奮状態となり、発汗がみられ、四肢は冷たくなる。
極めて高率に胸水や腹水がみられる。
また、肝臓の腫脹、補体の活性化、血小板減少、血液凝固時間延長がみられる 5)。
現時点でデング熱に対する特異的な治療法はなく、また国内で承認されている利用可能なワクチンはない 4)。
 デング熱は蚊を介して感染する。
発症した人が蚊に刺されると、その蚊にウイルスが移り、その蚊に刺された他の人に感染する。
そのため、デング熱の予防には蚊に刺されないようにすることが重要である。
海外の流行地へ渡航する際には、肌を露出しない長袖・長ズボンを着用する、素足でのサンダル履きを避ける、白など薄い色のシャツやズボンを選ぶ、虫よけスプレーや蚊取り線香を使用する、などの対策がある。
また、国外からの帰国時に発熱など心配な症状がある場合や体調に不安がある場合には、空港や港の検疫所に相談する。
デング熱の潜伏期間は 2~14 日間(多くは 3~7 日)である。
帰国後に症状が出た場合には、速やかに近くの医療機関を受診し、渡航先や渡航期間、渡航先での活動を伝えることが重要である 6)。
 なお、デング熱に限らず、海外においては国内では見られない感染症が流行していることがあり、海外滞在中に感染する可能性がある 7)。
海外へ渡航する際には、事前に渡航先における感染症の流行状況や現地滞在中の注意点をご確認いただきたい。
■参考・引用
1) 国立感染症研究所:日本の輸入デング熱症例の動向について(2023 年 7 月 14 日更新版)
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2) WHO 西太平洋地域事務局:Dengue Situation Update 675 06 July 2023
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3)WHO:Geographical expansion of cases of dengue and chikungunya beyond the historicalareas of transmission in the Region of the Americas
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4)国立感染症研究所: IASR Vol. 41 デング熱・デング出血熱 2015~2019 年
>>詳細はこちら
5)国立感染症研究所:デング熱とは
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6)厚生労働省:デング熱について
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7)厚生労働省検疫所 FORTH:夏休みに海外へ渡航される皆さまへ!
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【新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況】
 2023年第28週の県全体の定点当たり報告数は、前週の11.00人から増加し13.18人であった。
定点把握開始となった2023年第19週以降、県内の定点当たり報告数は継続して増加傾向にある。
県内16保健所中13保健所管内で定点当たり報告数が前週より増加した。

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年7月19日更新)